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2025.11.18
こんな国語をしています④ 「ドラえもん短歌」
本校で国語科の非常勤講師として勤務している佐藤学先生(静岡新聞社論説委員)から、寄稿をいただきました。ご一読ください。
こんな国語をしています④
高3生徒の「ドラえもん短歌」
国語科非常勤講師 佐藤学

「短歌の決まりは五七五七七だけ。この型が支えてくれる。このリズムは日本語を輝かせてくれる魔法の杖」。だから短歌を作ってみませんか、と歌人の俵万智さんが近著「生きる言葉」(新潮新書)に書いています。

新聞コラム「大自在」で短歌や俳句の引用は、いわば常套手段。文字数が少ないので要約も不要、そのまま使える点で頼もしい〝杖〟です。担当する国語「言論探究」(6A、6C選択)の最初の授業では、俵さんの〈青春という字を書いて横棒の多いことのみなぜか気になる〉を取り上げました。後期に入り、また短歌を引用した大自在を読んで探究学習の一歩にしてもらおうと、大自在と同じテーマで短歌を作ってもらいました。

まず「宇宙短歌」。1998年、スペースシャトルに搭乗した向井千秋さんが船内で上の句「宙がえり何度もできる無重力」を読み、下の句を募集。大自在では「涙は頬を伝わりますか」と66歳の女性が応募した下の句を「宇宙短歌百人一首」から引きました。
授業で生徒が続けた下の句は、

あの時がんばった逆上がり
体重忘れ気分は最高
ひとりで回る寂しい気持ち

など。頬が緩むものも、胸にぷすっと刺さるものもありました。

そして「ドラえもん短歌」。10月下旬にトランプ米大統領が来日して高市早苗首相と初の対面会談をする日に執筆の順番が回ってきて、窮余の策で大統領にジャイアンを重ねようという強引な発想。ネットでネタ探しをしていて、ことし9月、ドラえもん短歌の募集が20年ぶりにあったことを知りました。

言葉は人と人が伝え合うだけでなく、沈思黙考の道具でもあります。人は言葉でしか考えられません。「やばい」「むかつく」とワンフレーズにとどめず、希望や不安を言葉にすることで勇気がわいたり心のざわつきが収まったりするのではないでしょうか。

生徒諸君がせっかく作ってくれた短歌ですが、私には歌の素養も教養もありません。独断と偏見で「いいね」と思った作品を20首ほど選び、生徒に一人1~3首投票してもらいました。得票上位の作品を紹介します。

あの時にあの子に言えばよかったな そんなあなたにもしもボックス
暗記パンテストの前に配布して 大食いだけは得意分野です
リンリンと鈴の音だけが耳に残る 未来に帰る友を見送る
いつの間に家族の席に君がいて ドラえもん観る手をつなぎながら
ドラえもん大人になっても忘れない ひとりじゃないよ私の未来
君見るとなんでもできる気がするよ いつもありがと大切な人

どれも素敵。だれの心にものび太がいて、だれのそばにもドラえもんがいるようです。

余談ですが、ドラえもんの声優たちが交代したのは2005年。以来、娘が成長したこともあって私は疎遠になってしまいましたが、目の前の高3生徒が生まれる前のことだったんですね。

(静岡新聞社論説委員=寄稿)

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