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2021.11.08
11月8日 朝の礼拝奨励 “ Harvest”
芸術の秋、今回は美術の秋をお伝えします。

私は18世紀~19世紀にひかれます。市民革命、産業革命、資本主義という近代化が進み、特に大帝国時代ヴィクトリア朝の繁栄と荒廃のコントラストに関心があります。近代の光と闇、人間の優雅さと愚かさが入り交じる中で誕生した芸術・文化です。

今回、ご紹介するのは19世紀のフランス人画家ジャン=フランソワ・ミレーです。ミレーは最初パリで修業を積んでいましたが、1849年にパリでコレラが流行し、パリ南方60キロ、フォンテーヌブローの森のはずれにあるバルビゾンという農村に移りました。貧しさに耐えながらも自然を愛し、素朴に生きていく農民の姿に励まされ、農村の風景や農夫たちを描きました。作品には『種まく人』(1850年),『落ち穂拾い』(1857年)、『晩鐘』(同),『羊飼いの少女』(1864年)などの代表作があります。
『種まく人』
(1851年)
ジャン=フランソワ・ミレー
(ボストン美術館・米国)

この農夫は左肩に種の入った袋を掛け、右手で鷲づかみした種を大きく振ってまこうとしています。この躍動感あふれる構図は、まさに実りを祈り、希望に満ちて種をまく農夫の姿です。ミレーはバルビゾンの大地と向きあい、自然の厳しさの中でたくましく種をまく農夫の姿に、自身への励みと希望を見いだしていたのでしょう。
『晩鐘』
(1857年)
ジャン=フランソワ・ミレー
(オルセー美術館・パリ)

ジャガイモ畑で農作業する夫婦が、夕刻に教会(妻の後方に教会の鐘楼が見える)から聞こえてくるアンジェラスの鐘に合わせて祈りを献げています。

ミレーはこの作品を自身の子どもの頃のことを思い出しながら描いたとも言われています。夕刻になると、祖母は仕事の手を休め、幼いミレーに帽子を取らせ、共に祈りを献げたのでした。幼いミレーには祈りの言葉の意味はわかりませんでしたが、その夕暮れに祖母と祈りを献げる瞬間が、一日で一番好きな時間でした。
『落穂拾い』
(1857年)
ジャン=フランソワ・ミレー
(オルセー美術館・パリ)

刈り入れが終わった畑に残された麦の穂を拾い集める三人の貧しい農婦が描かれています。後方にはうず高く積み上げられた穀物が見え、地主が収穫を誇るように馬に乗って監督する姿が描かれています。
旧約聖書のルツ記にも地主のボアズが寡婦となったナオミとルツのためにわざと落穂を多く残す場面があります。ミレーは工業化、都市化が進む時代に、分断と格差の中でもたくましく生きる貧しい女性の姿を残したのです。

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